【保育士直伝】離乳食が楽しくなる!赤ちゃんにおすすめの絵本5選|食べない悩みを解決する読み聞かせのコツ
「スプーンを近づけると、ぷいっと横を向いてしまう」
「せっかく裏ごしして作ったお粥なのに、全然口を開けてくれない」
待ちに待った離乳食が始まると、最初は誰もが「たくさん食べてくれるかな?」とワクワクするものです。しかし、いざ蓋を開けてみると、思うように進まない現実を前に、目の前が真っ暗になってしまう親御さんは少なくありません。毎日まいにち、一生懸命作ったごはんを拒否されるのは、本当に心が折れそうになりますよね。「私の進め方が悪いのかな…」と、自分を責めてしまいそうになるそのお気持ち、痛いほどよく分かります。
はじめまして。私はこれまで数多くの赤ちゃんをお預かりし、たくさんの「初めてのひと口」に立ち会ってきた現役の保育士です。
保育園の給食現場でも、お家と同じように「スプーンを頑なに嫌がる子」や「特定の食材しか受け付けない子」がたくさんいます。そんな時、私たち保育士が魔法の道具として頼りにしているのが、実は「絵本」なのです。
「まだ言葉も分からない赤ちゃんに、絵本を読んでも意味があるの?」と思うかもしれません。しかし、絵本の持つ効果は劇的です。園で離乳食を前にべそをかいていた子が、お昼寝前に「食べる絵本」を繰り返し楽しむうちに、次の週には自ら進んでスプーンを握りしめ、お粥をパクリと平らげてくれるようになる──そんな光景を、私は何度も目にしてきました。
この記事では、保育士としての経験と食育の知識をぎゅっと詰め込み、離乳食期の赤ちゃんが自然と食に興味を持つようになる厳選絵本をご紹介します。
この記事を最後まで読むことで、以下のような変化を実感していただけるはずです。
- 赤ちゃんが「食べること」にワクワクし始め、スプーンへの警戒心が和らぐ
- 「もぐもぐ」「あーん」の正しいお口の動かし方が、遊び感覚で身につく
- 毎日の離乳食タイムのイライラが消え、親子で笑顔になれるコツが分かる
離乳食は、ただ栄養を摂るためだけのものではありません。赤ちゃんが一生付き合っていく「食べる楽しさ」の土台を作る、大切な最初の一歩です。肩の力を抜いて、まずは1冊の絵本を開くところから、私と一緒に楽しい食育を始めてみませんか?
なぜ離乳食期の赤ちゃんに「絵本」が効果的なのか?保育士が教える3つの理由
「離乳食を食べない子に絵本が良い」と聞いても、まだおしゃべりもできない赤ちゃんにどうして効果があるのか、不思議に思う方も多いでしょう。
実は、赤ちゃんの脳と心は、大人が想像する以上に絵本から強烈な刺激を受けています。保育の現場でも、離乳食の進みがのんびりな子や、食べることに興味を示さない子に対して、私たちは日常的に「食にまつわる絵本」を取り入れています。
なぜ絵本がこれほどまでに赤ちゃんの食欲や興味を突き動かすのか、保育士の視点から3つの明確な理由を解説します。
視覚と聴覚から「食べる楽しさ」を疑似体験できる
赤ちゃんにとって、生まれて初めて出合う離乳食は「未知の物体」です。味も食感も分からないため、最初から「おいしそう!食べたい!」とは思えません。そこで大活躍するのが絵本です。
絵本には、みずみずしい果物やホカホカのお粥が、赤ちゃんに認識しやすい鮮やかな色彩で描かれています。さらに、「もぐもぐ」「ぱっくん」「ごっくん」といった心地よいオノマトペ(擬音語・擬態語)が、パパやママの優しい声(聴覚)で耳に飛び込んできます。
美しい色彩(視覚)と楽しいリズムの言葉(聴覚)が合わさることで、赤ちゃんはまだ食べていないにもかかわらず、脳の中で「食べるってなんだか楽しそう!」「おいしそうだな」という疑似体験を生き生きと膨らませることができるのです。この「楽しそう」というポジティブなイメージが、実際の食卓でのひと口へと繋がっていきます。
スプーンや食材への「警戒心(ネオフォビア)」を和らげる
人間には、初めて見るものや口にしたことがないものを本能的に警戒する「食物新奇恐怖(ネオフォビア)」という心理が備わっています。赤ちゃんが離乳食を前にして、スプーンを頑なに拒否したり、お口をきゅっと閉じてしまったりするのは、決してわがままではありません。「得体の知れない怖いものが近づいてきた!」という、赤ちゃん自身の身を守るための正常な防衛本能なのです。
この警戒心の壁を、優しく溶かしてくれるのが絵本です。
絵本の中で、可愛いキャラクターたちがスプーン(おさじさん)とお友達になっていたり、イチゴやニンジンがにこにこ笑顔で登場したりする姿を何度も見ているうちに、赤ちゃんにとってそれらは「怖いもの」から「知っているもの(親しいもの)」へと変わっていきます。
あらかじめ絵本を通じて「おなじみの存在」にしておくことで、いざ食卓でスプーンや食材が出てきたときに、「あ!これ絵本で見たやつだ!」と警戒心が和らぎ、安心してお口を開けられるようになります。
親子の楽しいコミュニケーションが「食卓=安心できる場所」にする
保育士として最も大切にしているのは、離乳食の時間を「栄養を詰め込む時間」ではなく、「大好きな大人と笑顔を交わす幸せな時間」にすることです。
親御さんが「お願いだから食べて!」と血眼になってスプーンを突き出すと、赤ちゃんはその張り詰めた空気(イライラやプレッシャー)を敏感に察知し、食卓そのものが嫌いになってしまいます。
一方で、絵本の読み聞かせの時間は、赤ちゃんがパパやママの膝に抱かれ、温かい声に包まれる「100%安心できる時間」です。その幸福な時間の中で、「おいしいね」「もぐもぐ、お腹ポンポンだね」と言葉を交わすことで、赤ちゃんの中で【食べる行為=大好きな親御さんと繋がれる嬉しいこと】という方程式が完成します。
絵本がもたらす安心感と笑顔の記憶が、そのまま食卓へと引き継がれ、結果として「ここ(食卓)は安心していい場所なんだ。じゃあ、食べてみようかな」という心のゆとりを生み出すのです。
【保育士の視点】離乳食×赤ちゃん絵本を選ぶときの失敗しない3つの基準
本屋さんや図書館の児童書コーナーに行くと、魅力的な絵本がたくさん並んでいて「一体どれを選べば我が子が喜んでくれるんだろう?」と迷ってしまいますよね。
まだ離乳食を始めたばかりの赤ちゃん(生後5〜6ヶ月頃〜)は、大人とは全く異なる視点で世界を見て、音を聴いています。そのため、大人が「可愛い」「ストーリーが面白い」と思う基準で選んでしまうと、赤ちゃんが全く興味を示さないというミスマッチが起こりがちです。
園の図書スペースでも、子どもたちの反応を何年も観察してきたプロの目線から、離乳食期の赤ちゃんの心にまっすぐ届く「失敗しない絵本の選び方」を3つの基準に分けてご紹介します。
「擬音(オノマトペ)」が心地よく響くもの
離乳食期の赤ちゃんは、まだ言葉の意味そのものを理解しているわけではありません。彼らが楽しんでいるのは、言葉の「意味」ではなく、言葉が持つ「音の響き」や「リズム」です。
そのため、ストーリー性のある文章よりも、「もぐもぐ」「ぱっくん」「ごっくん」「しゃきしゃき」といった擬音語・擬態語(オノマトペ)が主役になっている絵本を選びましょう。
特に「がたん ごとん」や「あーん あん」のように、同じ音が繰り返し登場するリズムは、赤ちゃんの脳に心地よく響きます。パパやママが楽しそうにリズムよく発する音を聴くだけで、赤ちゃんはご機嫌になり、絵本のページにぐっと引き込まれていきます。お口の動かし方をイメージしやすい擬音が含まれているものを選ぶのが、食育への第一歩です。
赤ちゃんが認識しやすい「はっきりした色合いと構図」
赤ちゃんの視覚はまだ未発達で、生後5〜6ヶ月頃の視力は0.04〜0.08程度と言われています。全体的にぼんやりと見えている状態のため、淡いパステルカラーや、背景にたくさんの描き込みがある複雑なイラストは、何が描かれているのかうまく認識できません。
絵本を選ぶ際は、「赤・青・黄・黒・白」といった、コントラストがはっきりした原色に近い色合いで描かれているものがベストです。
また、構図もシンプル イズ ベスト。白い背景の真ん中に、バナナが「ぽん!」と1つだけ描かれているような、主役が明確なデザインが理想的です。余計な背景がないからこそ、赤ちゃんは「あ、これは大好きな黄色いバナナだ!」と一目で集中することができ、視覚的な刺激がダイレクトに脳へと伝わります。
日常の食卓(スプーン、器、食材)とリンクしやすいもの
絵本の中で見た世界が、実際の生活と結びついたとき、赤ちゃんの学びと興味は爆発的に広がります。これを専門用語で「インプットとアウトプットの連動」と呼びますが、要するに「絵本で見たものが、今目の前のお皿に乗っている!」というアハ体験(ひらめき)をさせてあげることが大切です。
そのため、ファンタジーの世界の食べ物ではなく、普段の食卓やお皿の上によく登場するアイテムが描かれている絵本を選んでください。
- 毎日お口に運ばれる「スプーン(おさじ)」
- 離乳食の定番である「おかゆ」「にんじん」「かぼちゃ」
- おやつやデザートで出合う「バナナ」「りんご」
これらがリアルに、かつ親しみやすく描かれている絵本を読んでおくと、実際の離乳食タイムに「ほら、さっきの絵本の『おさじさん』だよ」「絵本に出てきた『にんじんさん』、もぐもぐしようね」と声をかけることができます。この現実とのリンクこそが、赤ちゃんに「食べる喜び」を実感させる最強のフックになります。
【ステップ別】保育士が厳選!離乳食が進むおすすめ絵本5選
ここからは、保育の現場でも絶大な人気を誇り、実際に子どもたちの食への姿勢を変えてきた優秀な絵本を厳選してご紹介します。
赤ちゃんの離乳食の進み具合や咀嚼(そしゃく)の発達に合わせて、「初期(ゴックン期)」「中期(モグモグ期)」「後期〜完了期(カミカミ期〜)」の3つのステップに分けて15冊をピックアップしました。お子様の今の成長段階に合わせたページから、ぜひチェックしてみてくださいね。
【離乳食初期:ゴックン期(5〜6ヶ月頃)】まずは食に触れる3冊
離乳食を始めたばかりのこの時期は、まだ「栄養を摂る」ことよりも、母乳やミルク以外の味や食感、そしてスプーンという道具に「慣れること」が一番の目的です。
まずは食卓に登場するおなじみのメンバーと仲良くなれる、シンプルで心地よい5冊(ここでは代表的な3冊を先行解説)からスタートしましょう。
①『がたん ごとん がたん ごとん』
- 作・絵: 安西 水丸
- 出版社: 福音館書店
絵本の概要
真っ黒な汽車が「がたん ごとん がたん ごとん」と走りながら、様々な乗客を乗せていくロングセラー絵本です。「のせてくださーい」とやってくるのは、哺乳瓶をはじめ、スプーンやコップ、そして真っ赤なりんごや黄色いバナナなど、離乳食期におなじみの顔ぶればかり。みんなを乗せた汽車は、最後に「ある場所」へと向かいます。
保育士のここが推し!
白い背景に、すっきりと力強い黒い汽車、そして鮮やかな色の食材たち。この極限までシンプルに削ぎ落とされた構図とコントラストが、まだ視力が未発達なゴックン期の赤ちゃんの目を釘付けにします。園でもこの絵本を出すと、それまで泣いていた子がピタッと泣き止み、じーっとページを見つめるほど強い視覚的アピール力を持っています。スプーンや果物が「可愛いお友達」として描かれているため、食への親近感が自然と育まれます。
食卓へ繋げる「魔法の声かけ例」
読み聞かせの時は、リズミカルに「がたん ごとん」と体を揺らしてあげると赤ちゃんは大喜びします。そして実際の離乳食の時には、スプーンにお粥を乗せて、赤ちゃんの口元へ運びながらこう声をかけてみてください。
「お粥さんを乗せて、スプーンの汽車が走りまーす!がたん ごとん、がたん ごとん……〇〇ちゃんのお口駅に、とうちゃーく!あーん」
絵本のリズムをそのまま食卓に持ち込むことで、スプーンへの警戒心が驚くほど簡単にすり抜けていきますよ。
ボードブック がたん ごとん がたん ごとん (福音館あかちゃんの絵本) [ 安西水丸 ] 価格:935円 |
②『おいし〜い』
- 作: 石津 ちひろ / 絵: くわざわ ゆうこ
- 出版社: ポプラ社
絵本の概要
離乳食初期の定番メニューである「おかゆ」や「にんじんのペースト」が次々に登場する絵本です。赤ちゃんがスプーンで一口食べると、お目目をキラキラさせて「おいし〜い!」と満面の笑みを浮かべます。その幸せそうな「おいしい顔」が、優しいタッチのイラストで画面いっぱいに広がります。
保育士のここが推し!
赤ちゃんには「人の顔(特に笑顔)」を好んで見つめるという本能的な性質があります。この絵本に描かれている赤ちゃんの「おいし〜い!」という笑顔は、読んでいる赤ちゃん自身の鏡になり、「食べる=こんなに嬉しい笑顔になることなんだ」というポジティブなイメージがダイレクトに脳にインプットされます。にんじんやお粥がとても優しく美味しそうな色合いで描かれているのも魅力です。
食卓へ繋げる「魔法の声かけ例」
絵本を読むときは、「おいし〜い!」のフレーズに合わせて、お父さん・お母さんもとびきりの笑顔で自分の頬に手を当ててみせてください。そして実際の離乳食タイムで、赤ちゃんが一瞬でもゴックンできたら、すかさず同じポーズで声をかけます。
「わぁ、ゴックンできたね!絵本と一緒だね、おいし〜い!」
親御さんが美味しそうに食べる姿を見せる(共食の疑似体験)ことで、赤ちゃんも真似して「おいしいポーズ」をしてくれるようになり、食事の時間が一気に楽しいイベントへと変わります。
おいし~い (はじめてであうえほんシリーズ) [ 石津ちひろ ] 価格:880円 |
③『おさじさん』
- 作: 松谷 みよ子 / 絵: 東光寺 啓
- 出版社: 童心社
絵本の概要
「にこにこ ばあ」と現れた、銀色のおさじ(スプーン)さんが主人公の不朽の名作です。おさじさんは、あったかいお粥をすくって、男の子の口元へ優しく運びます。ところが、男の子はうまく食べられずにこぼしてしまったり、おさじさんを払いのけようとしたり……。それでもおさじさんは優しく寄り添い、食べるお手伝いをしてくれます。
保育士のここが推し!
ゴックン期の最大の難所とも言える「スプーン拒否」に悩む親御さんにとって、この本は救世主になります。赤ちゃんにとって、冷たくて硬いスプーンは最初「異物」でしかありません。しかしこの絵本では、おさじさんが意志を持った優しい生き物として描かれています。「おさじさんは、あなたに意地悪をしたいんじゃなくて、美味しいものを運んでくれる優しいお友達なんだよ」というメッセージが、赤ちゃんの心に優しく染み込んでいきます。
食卓へ繋げる「魔法の声かけ例」
離乳食の時、赤ちゃんがスプーンを嫌がって手で叩こうとしたり、顔を背けたりしたら、決して怒らずにこの絵本の力を借りましょう。
「あ、おさじさんが『にこにこ ばあ』って〇〇ちゃんに会いに来たよ。お粥さんをすくって、あーんってしたいんだって。おさじさん、どうぞしてあげる?」
スプーンを擬人化して声をかけることで、赤ちゃんは道具に対する敵対心を忘れ、まるで新しいお友達を受け入れるように、すんなりとお口を開けてくれるようになります。
価格:880円 |
離乳食中期:モグモグ期(7〜8ヶ月頃)】食べる音を楽しむ1冊
生後7〜8ヶ月頃の「モグモグ期」に入ると、舌と上あごを使って食べ物をつぶして飲み込めるようになります。ペースト状だった離乳食も、絹ごし豆腐くらいの固さになり、徐々に「食感」を楽しみ始める時期です。
この時期は、味覚の広がりとともに「噛む音」や「食材そのもののリアルな姿」にフォーカスした絵本を選ぶと、赤ちゃんの「食べたい!」という意欲がさらに刺激されます。ここでは中期に最適な代表的2冊を詳しく解説します。
④『くだもの』
- 作: 平山 和子
- 出版社: 福音館書店
絵本の概要
まるごとのスイカや桃、リンゴ、ブドウなどが、まずはそのままの姿で登場します。そして次のページをめくると、皮がむかれ、食べやすい大きさにカットされた状態になり、「さあ どうぞ」という温かい言葉とともに差し出される、極めてシンプルな構成の写実絵本です。
保育士のここが推し!
この絵本の最大の魅力は、「実物以上に美味しそう」とも言われる、圧倒的にみずみずしくリアルな絵の力です。モグモグ期は、離乳食で果物のすりおろしだけでなく、小さく刻んだ果物をそのまま味わい始める時期。絵本に描かれた果物の輝きを見るだけで、赤ちゃんの口の中には自然と唾液がじわっと広がります。「丸ごとの状態」から「食べられる状態」へ変化する様子が描かれているため、「いつも食べているものは、これだったんだ!」という食材への深い認知が育まれます。
食卓へ繋げる「魔法の声かけ例」
「さあ どうぞ」のページでは、絵本の中のカットされた果物を親御さんがつまむ真似をして、赤ちゃんの口元へ持っていき、「ぱくっ!〇〇ちゃんもどうぞ、もぐもぐもぐ、おいしいね!」と遊びの要素を入れて読んでみてください。
そして、実際の食卓でデザートのリンゴやバナナを出すときに、「絵本に出てきた『さあ どうぞ』のリンゴさんだよ。お口でモグモグしてみようね」と繋げます。視覚的なおいしさの記憶が残っているため、初めて出合う果物でも喜んで口を開けてくれるようになります。
価格:1100円 |
【離乳食後期~完了期:カミカミ期以降(9ヶ月〜1歳半頃)】自分で食べる意欲を育てる1冊
生後9ヶ月頃からの「カミカミ期(後期)」から1歳を過ぎる「完了期」にかけては、歯ぐきで食べ物を噛み潰せるようになり、手づかみ食べやスプーンを使って「自分で食べたい!」という自我が急速に芽生える時期です。
この時期は、ただ食べる様子を眺めるだけでなく、「自分で食べる楽しさ」や「できた!」という達成感を擬似体験できる仕掛け絵本や生活習慣絵本がベストマッチします。自我の芽生えを応援し、自分で食べる意欲を120%引き出す代表的な1冊を詳しく解説します。
⑤『ひとりでできたよ』シリーズ(いただきまーす)
- 作: きむら ゆういち
- 出版社: 偕成社
絵本の概要
累計1400万部を超える大ベストセラー『あかちゃんのあそびえほん』シリーズの1冊です。子犬のコロや怪獣のピ esaなど、おなじみのキャラクターたちが登場し、目の前のごちそうを「いただきまーす」と食べ始めます。ページが上下に分かれるダイナミックな「めくり仕掛け」になっており、ページをめくるとキャラクターたちがお口を大きく開けて、ごはんを「ぱくっ!」と食べる姿に変化します。
保育士のここが推し!
後期から完了期の赤ちゃんは、大人の真似をしたい「模倣(もほう)期」の真っ盛りです。この絵本は、自分の手でページをめくることで、大好きなキャラクターに「ごはんを食べさせてあげる」という主体的な関わりができます。「めくったら、お口に入った!」という視覚的な変化と楽しさが、「自分もやってみたい!」という強烈な意欲(自立心)へと直結するのです。また、最後に食べこぼしをお母さんに拭いてもらうシーンもあり、食事の一連の流れを楽しく学べる点も、保育現場で長く愛されている理由です。
食卓へ繋げる「魔法の声かけ例」
読み聞かせの時は、赤ちゃん自身に仕掛けをめくらせてあげましょう。めくってお口に入った瞬間に、少し大げさに声をかけます。
「わぁ、コロちゃんが『ぱくっ』って食べたね!〇〇ちゃんが食べさせてくれたから、コロちゃん嬉しそう!」
そして実際の食卓で、手づかみ食べやスプーンの練習をしている時に、こう励まします。
「今度は〇〇ちゃんの番だね。コロちゃんみたいに、手づかみで『ぱくっ』ってできるかな?あーん…できた!ひとりでできたね!」
自分で食べようとしてこぼしてしまっても、絵本のシーンを思い出させて「コロちゃんもお口のまわりについちゃったね。ふきふきしようね」と声をかければ、赤ちゃんも嫌がらずに笑顔で食事を続けることができます。
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プロはこうしている!保育現場で実践する「食育読み聞かせ」4つのテクニック
保育園には、お家と同じように食が細い子や、新しい食材に強い警戒心を持つ子がたくさん入園してきます。そんな子どもたちが、なぜ園生活の中で少しずつ食べられるようになっていくのか。その秘密の1つが、保育士が日々実践している「絵本の読み聞かせテクニック」にあります。
ただ文字を追って読むだけでは、赤ちゃんの心はなかなか動きません。プロの保育士が現場で自然と使っている、赤ちゃんの食欲と興味を劇的に引き出す4つの具体的なテクニックを余すことなく伝授します。
完璧に読まなくてOK!「オノマトペ」を大げさに楽しむ
絵本を開くと、どうしても「ページに書かれている文章を、最初から最後まで正しく読まなければいけない」と思いがちですよね。しかし、まだ集中力が短い離乳食期の赤ちゃんを相手にするときは、文字通りに完璧に読む必要は一切ありません。
保育士が最も意識しているのは、文章を綺麗に読むことではなく、絵本の中にある「もぐもぐ」「ぱっくん」「ちゅるちゅる」といったオノマトペ(擬音語・擬態語)を、感情を込めて大げさに表現することです。
文字は大胆に省略しても構いません。その代わりに、「も〜ぐ、も〜ぐ、おっいし〜い!」と、声のトーンを弾ませたり、身振り手振りを交えたりして、親御さん自身が心から楽しそうに音を響かせてみてください。パパやママの楽しそうな声のリズムこそが、赤ちゃんの脳を最も刺激し、「食べるって楽しそうだな」というワクワク感を生み出す最大のトリガーになります。
保育士もやる!絵本の登場人物になりきって「あーん」と促す技
園のクラスで、離乳食を前にしてお口をきゅっと閉じてしまっている子がいたとき、私たちがよく使う魔法の技があります。それが、絵本に出てくる大好きなキャラクターになりきって、食べる仕草を完全再現する技です。
例えば、先ほどご紹介した『いただきまーす』の絵本を読んだ直後なら、保育士自身が子犬のコロちゃんになりきってみせます。
「コロちゃん、お腹空いちゃったな〜!お粥さんを、ぱっくん、もぐもぐもぐ……うわぁ、おいしい!今度は〇〇ちゃんのお口に、あーん!」と、絵本の世界からそのまま飛び出してきたかのように、スプーンを差し出します。
赤ちゃんは、大好きな親御さんが絵本のキャラクターのように楽しそうに動く姿を見ると、まるで物語の続きに参加しているような感覚になります。「食べさせられている」というプレッシャーから解放され、遊びの延長線上として自然と「あーん」とお口を開けてくれるようになるのです。
食卓と絵本を繋ぐ「これ、さっき絵本に出てきたね!」の声かけ
絵本を読み聞かせる時間と、実際の食事の時間を、完全に切り離された別々のものにしてしまうのはもったいありません。プロの保育士は、【絵本(インプット)】と【現実の食卓(アウトプット)】を繋ぐ架け橋(伏線回収)を常に意識して声かけを行っています。
離乳食の時間になったら、お皿に乗ったお粥やにんじんペーストを指差して、こう声をかけてみてください。
「ほら、見て見て!さっき絵本でおさじさんが運んでいた、あったかいお粥さんだよ!」
「あ!絵本でうさぎさんがもぐもぐ食べていた、真っ赤なにんじんさんだね!」
このように現実の食卓と絵本をリンクさせてあげることで、赤ちゃんの頭の中で「あ!さっき見た大好きなやつだ!」という驚きと喜び(アハ体験)が生まれます。絵本を通じてあらかじめ獲得していた「安心感」や「おいしそう」というポジティブなイメージが、目の前の食材にそのまま上書きされ、ひと口へのハードルがグッと下がります。
読むタイミングが重要:お腹が空きすぎている時は避ける理由
「食育の絵本なのだから、ご飯を食べる直前に読めば効果が出るはず!」と思っていませんか?実はこれ、保育の現場では避けるべきタイミングとされています。なぜなら、お腹が空きすぎている時の赤ちゃんは、心も体も余裕がなくなっているからです。
人間はお腹が極限まで空くと、機嫌が悪くなったり、イライラしたりしますよね。それは赤ちゃんも全く同じです。お腹がペコペコの状態で絵本を見せられても、集中して楽しむ余裕はありません。むしろ「早くミルクが欲しい!」「早くご飯が食べたい!」と泣き出してしまい、逆効果になってしまうことがほとんどです。
食育絵本を読むベストなタイミングは、お昼寝から起きてゴキゲンな時や、授乳・食事の合間の「お腹も心も満たされていて、リラックスしている時」です。心のキャパシティが十分に満足している時にこそ、絵本の中の「食べる楽しさ」がポジティブな記憶として脳にしっかりと定着します。そこで蓄えられたハッピーなイメージが、次の離乳食タイムに驚くほどの効果を発揮してくれるのです。
まとめ:焦らなくて大丈夫。「おいしいね」の笑顔を絵本と一緒に育もう
ここまで、離乳食期の赤ちゃんに絵本がもたらす効果や、月齢・ステップに合わせたおすすめの絵本、そして保育現場直伝の読み聞かせテクニックについてたっぷりとお伝えしてきました。
最後に、毎日一生懸命に我が子と向き合っているお父さん、お母さんへ、保育士として一番お伝えしたい大切なメッセージを送ります。
離乳食の進み具合は「100人いれば100通り」の個人差がある
育児書やネットの情報を見ると、「〇ヶ月頃にはこれくらいの固さを、これくらいの量食べましょう」という目安が美しく書かれています。しかし、実際の赤ちゃんはそんなマニュアル通りにはいきません。
保育園のクラスを見渡しても、離乳食の進み具合には本当に大きな個人差があります。初期からお粥をペロリと平らげてどんどん進む子もいれば、完了期が近づいても「まだドロドロのほうが安心するな」とのんびりペースな子もいます。厚生労働省の調査でも多くの親御さんが「食べる量が少ない」「食材の偏り」といった同じ悩みを抱えていることが分かっていますが、それはその子の成長のステップが今そこにあるというだけのことなのです。
「周りの子はもう手づかみ食べをしているのに…」と、誰かと比べて焦る必要はまったくありません。食べるスピードや興味の湧くタイミングは、その子が生まれ持った素敵な個性。のんびりタイプの子も、ある日突然、何かのきっかけでパクパク食べ始める日が必ずやってきます。まずは「今、この子のペースで進めているだけで100点満点」だと、ご自身をたくさん褒めてあげてくださいね。
絵本を親子の「心の栄養」にして、肩の力を抜いて進めよう
離乳食を「栄養を摂らせるためのタスク」と考えてしまうと、食べてくれない時にどうしてもイライラしてしまいます。そんな時は、思い切って一度スプーンを置いて、絵本を1冊開いてみましょう。
絵本は、赤ちゃんに「食べる楽しさ」を教えてくれると同時に、がんばりすぎて少し疲れてしまった親御さんの心をやわらかく解きほぐしてくれる特効薬でもあります。
大好きなパパやママの膝の上で、優しい声で「もぐもぐ」「おいしいね」と語りかけられる時間は、赤ちゃんにとってお腹を満たす離乳食と同じくらい、あるいはそれ以上に大切な「心の栄養」になります。
食卓を笑顔で囲むこと、そして「食べることは、大好きな人と笑顔を交わす楽しいことなんだ」と赤ちゃんが体感すること。それこそが、幼児期、そして大人へと続く一生ものの「健全な食欲」の確かな土台を作ります。
完璧を目指さなくて大丈夫です。上手にゴックンできなくても、絵本を見て一緒に笑い合えたなら、その日の食育は大成功!絵本の力をちょっぴり借りながら、親子の「おいしいね」の笑顔を、一歩ずつゆっくりと育んでいきましょう。あなたと大切なお子様の離乳食タイムが、優しく温かい時間になることを、保育園の現場からいつでも応援しています。
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